電車のモーターには、電圧がかかり、動作します。
ただし、発車時は止まってる重い電車を動かすため、大きな力が要ります。
一方、走り出してしまえば、力より回転力が必要になります。
これらは、電動機にかかる電圧で、制御が可能なわけです。
一番簡単なのは、抵抗制御という方式です。
抵抗制御は、電源と電動機(モーター)との間に、抵抗器を挟んで電圧・電流を制御します。
例えば、この115系など。
構造は簡単ですが、抵抗器では結局、電力を熱に変えて、捨てることになります。
もったいないわけです。
そこで、電力がかかっていないモーターを惰性で走らせると、逆に発電することを利用して、発電した電気を架線に返し、他で消費することでブレーキ力を得る、「回生ブレーキ」を実現するため、各社は知恵を絞ることになります。
まず出てきたのは、「電機子チョッパ制御」
この03系ほか、6000系以降の営団車、01系、02系など。
チョッパとは、「切り刻む」の意味で、電機子(回転軸)にかかる電圧・電力を、高速で入れたり切ったりすることで、みかけの電圧を制御します。
トータルで、見るわけですね。
この方式だと、抵抗器が要らないので、熱を出されると困る、地下鉄で普及しました。
もちろん、回生ブレーキもかかります。
この時は、界磁という外側の磁石にかかる電圧をチョッパ制御して、電圧を変化させ、架線に返すことが出来ました。
実際には、架線の電圧よりも、界磁の電圧を高くしてやれば、自然と架線に電気が返されます。
一方、地上線が主な私鉄などは、電機子は別に抵抗制御でもよく、減速時に界磁にかかる電圧だけをチョッパ制御する、「界磁チョッパ」を使うところが多かったようですね。
電機子と界磁の両方をチョッパ制御するよりは、安く作ることが出来ました。
チョッパ制御の装置って、当時は高価だったんです。
ただし、この界磁チョッパを実現するには、電動機のコイルを、複巻電動機にする必要がありました。
複雑で、重いのです。
このあと、技術者は考えるわけです。
それまでの、簡単な直巻電動機で、回生ブレーキはかからないものか?
それを実現したのが、こちら。
「界磁添加励磁制御」
205系や211系など。
界磁の電圧を制御するのではなく、別電源をつなぐことで界磁の電圧を変化させ、回生ブレーキを実現します。
それまでの抵抗制御と同じ、直巻電動機で、回生ブレーキが実現したわけです。
この205系は、山手線を始め、多くの線区で投入され、省エネな回生ブレーキを実現しました。
しかし、その時代はあまり、長くは続かず。
すぐに、この方式が実用化されました。
VVVFインバータ制御。
VVVFは和訳すると、「可変電圧可変周波数」になります。
実際には、直流電源をインバータで、三相交流に変換します。
これにより、誘導電動機が使用可能になります。
誘導電動機は、直流電動機では絶対に不可欠だった、回転子とモーターとの、電気的接点がありません。
昔習った「フレミングの法則」で、回転子が回転するのです。
これだと、それまでブラシを使って緩くつないでいた部分が、一切不要になり、故障も少なく、メンテナンス面でも、大きく省力化されたんです。
もちろん、電圧は可変に出来ますから、回生ブレーキもかかります。
また、誘導電動機は小型で丈夫なので、逆に大きな出力を出させることが出来ます。
VVVFインバータ制御は、鉄道車両のメカニズムを大きく変えた、画期的な方式なんです。
交流区間では、単相交流をいきなり三相交流には出来ないので、一度直流に整流してから、三相交流を作ります。
そのロスを補うだけのメリットが、鉄道会社にはあったわけです。
実際、VVVFインバータでも、サイリスタというスイッチ入り切り装置が進化、昔はうるさかった変換音が、今ではだいぶ静かになりました。
乗客としては、願ったり叶ったりですね。
…鉄道趣味的には、多少音が出た方が、面白いんですけどね。。。