(敬称略)
日本シリーズは、ホークスの日本一で、幕を閉じました。
両軍とも奮闘、死闘を尽くした戦いに、拍手を送りたいですね。
ところで、話は変わって、NFLのお話。
アメリカンフットボールは、ボールを持って走ったり、パスしたりして、4回の攻撃で10ヤード進むことを繰り返すゲームです。
ただし、4回目の攻撃終了時点で10ヤード取れてないと、その場所から相手の攻撃になってしまいますから、その前の、3回目の攻撃の結果で、どうするかを判断します。
通常はパントというキックを蹴って、攻撃権を放棄する代わりに距離を稼いで、相手の攻撃地点を後ろに下げる、という選択をします。
ある程度前進している場合は、キックを蹴ってボールをポール間に入れる、フィールドゴールという選択肢も取れます。
この場合は3点入ります。
ただし、状況によっては、攻撃によって10ヤードの残りを取りに行く選択をする場合があります。
成功すれば、さらに攻撃を続けられますが、失敗したらそこで攻守交代になるため、リスキーで、「ギャンブル」と言われます。
でも、状況によってはギャンブルが許される場合、時にはギャンブルが最良の選択肢の場合も、あるのです。
こういう状況を上手く活かして、確率の高いギャンブルを成功させて、攻撃をつないでいったチームを評して、解説が「意味のあるギャンブルをしてますね~」と言ったのを、よく覚えています。
ギャンブルで攻撃をつなげば、タッチダウンで最大8点が取れる可能性が、ありますから。
日本シリーズに戻って…、
ホークスにはこの、「意味のあるギャンブル」に、2回も勝った人がいます。
もちろん、第2戦、今宮を突入させて、「神の手」でセーフにしたプレーと、第6戦、中村晃の激走で、サヨナラ日本一を演出したプレーの、2つです。
どちらも、ライト前に飛んだヒットの、返球。
横浜DeNAのライトは梶谷ですが、皆さんご覧の通り、どちらも、タイミングはアウトです。
素人考えなら、どちらも、サードコーチャーは「ストップ!」がセオリーでしょう。
第2戦の走者・今宮の場合は、もちろんスタートも走塁も完璧、手から滑る判断もバッチリでした。
実は村松さん、あることに気づいていたと明かしています。
試合前。
梶谷が、シートノックに入っていなかった。
何か(故障が)あると、読んだそうです。
逸れれば、なにかある、と、回した。
送球はわずかに一塁側に逸れ、“神の手”が生まれる時間とスペースが生まれたのです。
第6戦の走者・中村晃の場合も、走塁は完璧。
激走でした。
さらに…
「打球がわずかにセンター寄りで、梶谷が打球を正面で処理できなかったから、回した」んだそうです。
梶谷は右投げ。
グラブは左手ですから、右側の打球に、体勢が崩れたでしょう。
送球はベース手前で大きくイレギュラーというラッキーもあって、歓喜のホームインとなりました。
さらに、村松さんはこんなことを語っていました。
「第2戦はエラーの後、第6戦もマズいプレーで、1塁ランナーが生きた後。
ホークスに流れが来ていると思って、回した」
そう、一見アウトのタイミングに見える場面だったのに、プロの目で見ると、実はいろんな要素があって、セーフになるチャンスがあった。
それに、賭けた。
「意味のあるギャンブル」だったのです。
横浜DeNAで随分言われたのは、第6戦の8回、ホークスの2点目。
サードランナーが飛び出して、止まってしまったのに、ピッチャー砂田は迷わず一塁に投げ、みすみす三塁走者の生還を許してしまったプレー。
あの場面は、特に前進守備は取ってなかったそうで、まず確実に1アウトを取ろう、ってことだったらしいです。
キャッチャーも一塁を指示して、砂田はその通り投げたと言います。
確かに結果的に、内川のホームランで同点になってしまうんですが、セオリーでは多分、確実に一塁アウトのような気がします。
ただ、ホームに投げればランダウンプレーにはなるけど、サードランナーを殺せる確率は高かった。
一方で、何かあれば生還を許す上に、打者走者まで得点圏なんていう、最悪のケースも考えられたわけです。
ギャンブルだったと思いますよ。
ホームに投げるのも。
でも、この場は日本シリーズ。
しかも、横浜DeNAは勝たなければ、次はない状況です。
リードはしているものの、終盤の1点の重みは、時に1点以上になることがあります。
ギャンブルに打って出る選択に、確かに意味はあったのです。
でも、実際にギャンブルが出来るかと言われると、難しい判断だったとは思いますね。
野球はチームプレー。
一人でも違うことを考えていると、上手く行きませんから。
逆に、村松コーチの判断に懸命に応え、ギャンブルをものにした今宮と中村晃も、素晴らしかったと思います。
日本シリーズは、頂点を決めるシリーズである上に、短期決戦ですから、リーグ戦のセオリーとは全く違うことが起こりえるシリーズなのでしょう。
それを捉えることが出来るのは、やっぱり経験、そして勝ちたい意識なんでしょうね。
勝ちたかったんですよ。
ホークスは。
ファンも、関係者も。
ホークスの選手ももちろんでしょうけど、敗れた横浜DeNAの選手や首脳陣も、そして両チームのファンまでも、様々なことが経験できた、素晴らしいシリーズだったと思いますよ!