電車にはありませんが、寝台特急やイベント客車、地方の客車列車などに乗ったことがある方は、見覚えがあるかも知れません。
「ス」は「スチールカー」で、42.5トンまでの自重を表す記号、「ロ」は二等車、現在のグリーン車を表す記号です。
そして、「フ」は…
「緩急車」と言います。
“緩”は遅い、“急”は速いで、速度を司る車両。
つまり、「ブレーキを装備した車両」が語源です。
かつては濁点が付いて、「ブ」を付けていましたが、その後「フ」となりました。
客車ばかりでなく、貨車にも付いた記号です。
「トムフ」とか、「コキフ」とかありました。
わざわざ「ブレーキの付いた車両に記号を付けた」訳は?
今でこそ、運転士さんがブレーキを操作すれば、全ての車両のブレーキが、瞬時に動作します。
指令を伝えるための電線、その前は高圧空気管が、編成最後尾まで引き通されてるからです。
でも、昔はそんなものはなかった。
もちろん機関車にはブレーキはありましたが、機関車だけブレーキをかけたら、慣性の法則で、貨客車は機関車にぶつかってしまいます。
そこで、何両かに一両、手動のブレーキを装備する車両、つまり緩急車を混ぜておきます。
緩急車には車掌や、ブレーキを専門にかける、ブレーキマンが乗務。
汽笛を合図に一斉にブレーキをかけて、安全に編成を停止させていたのでした。
最近は客車や貨車であっても、ブレーキ管をみんな装備しているので、ブレーキマンが乗務する必要はないんですが、万が一のために、ブレーキ付きの緩急車を、編成に混ぜておくようですね。
客車の場合は、車掌さんの詰め所にもなりますしね。
なので、一時期流行った展望設備とか、パノラマの最後尾とかは、「フ」とは関係がないのです。
あくまで、編成全体の安全のための、設備なんですね。
ちなみに今のブレーキは、電気指令式が主流です。
運転士さんのブレーキ操作を、電気信号で各車両に伝えて、ブレーキをかけます。
その前は電磁直通式と言って、車両内は空気圧で指令を伝え、車両と車両の間は電磁弁を使って、電気的に次の車両に伝える方式が多かったようです。
車両間は切ったりつないだりするわけで、指令にロスが出るわけですが、そこを電気化したために信頼性が上がり、長編成が組めるようになりました。
その前は自動ブレーキという方式で、さらに前は直通ブレーキと言われる方式。
どちらも、ブレーキ管を引き通して、各車両にブレーキ指令を出していましたが、自動ブレーキにはある特徴がありまして。
「ブレーキ管の圧力がゼロになると、非常ブレーキがかかる」
直通式は、圧力に応じてブレーキ力が強くなる仕組みでした。
しかしこれだと、万一ブレーキ管が破損してしまうと、ブレーキ力はゼロになってしまいます。
そこで、自動ブレーキは逆転の発想!
ブレーキ管の圧力が減るとブレーキ力が増える仕組みで、圧力が0になると、最大の非常ブレーキがかかります。
つまり、ブレーキ装置に故障が起こっても、とりあえずブレーキがかかるのです。
「フェールセーフ」という考え方には、まさしく適合した方式ですね。
その次の電磁直通式にも、予備として搭載されていたそうですよ。