「ヌ」なんて、普段でもあまり使わないのに、あるの?
あるんです。
正確には「あった」ですが…。
「暖房車」に付きました。
語源は「温める」
ただ、暖房装置を乗せた客車では、ありません。
こんな事情が、あったそうです。
かつて、機関車に牽引されて走る客車は、暖房装置を搭載していませんでした。
機関車は蒸気機関車。
蒸気機関車から発生する蒸気を利用して、編成に引き通して、車内を暖めていたのです。
うまい転用ですよね♪
ところが、無煙化の一環で機関車が電気機関車やディーゼル機関車になると、編成に引き通す蒸気がありません。
こうなると、客車が暖房できなくなってしまいます。
そこで、客車暖房のため“だけ”に、ボイラーを積んで蒸気を作る車両が造られました。
それが、本車両ってわけです。
でも実際のところ、編成に蒸気機関車を1両余計につないでいるようなもので、煙も出ますし、重さもありますから、牽引できる客車が、少なくなってしまいます。
程なく、機関車側にボイラーを積んだものが登場し、「ヌ」はお役御免となったわけでした。
「暖房車」と言えば、こんな記憶も。
若い頃、松本から鹿児島へ帰るのに、両端は急行「ちくま」と「かいもん」を使うものの、その間の大阪から門司は、全て普通列車で帰ったことがありました。
暑い夏の日の、大移動でした。
岡山から乗り継いだのは、長距離鈍行列車の下関行き。
一番暑い日中、確か数時間は乗る電車ですが、やってきたのは、冷房非搭載車。
「暑かった!!」ですねぇ~!!
当時、こういう非冷房車を、「暖房車」なんて揶揄したわけです。
20年も前はまだまだ、冷房は当たり前の装置ではなかったんですよ!